現在の状況について
今はどんなお仕事をされているんですか?
SAPジャパンで企業向けの業務ソフトウェアの営業をやっています。具体的には既存のお客様に対して必要とされている業務アプリケーションの提供を行います。
入社後すぐにバディ(先輩)に付いて営業活動をスタートしました。現場に出て業務を覚えていった感じですね。半年くらい経った頃に状況によっては一人でも活動ができるようになりました。
どういった経緯でいまの仕事にたどり着いたんですか?
はい。人口減少などもあり日本の経済力が衰えてきている中で、その改善に繋がる仕事をしたいなと考えていました。日本企業が成長していくには、競争力を維持するためのデジタル・IT活用が必須だと思っています。SAPジャパンにはERPといって、「ヒト」「モノ」「カネ」といった企業の経営資源を管理し、経営の高度化を実現するシステム製品が揃っています。まさに企業の競争力に直結しますのでこの企業で働きたいなと思ったのがきっかけです。
他の業界は選択肢になかったんですか?
他業界だとコンサルティング企業で戦略を組み立てることにも興味はありました。企業の課題を捉えて戦略を考えるって大切な仕事ですよね。でも各企業のデジタル活用の方が今の日本には必要だなって。今後ボトルネックになりそうなのがデジタル分野と考えていたので。
どちらも業界的には違いますがサッカーで学んだ土台のスキルは活かせますから。全くゼロからのスタートとは思っていませんでした。

現職でのやりがいはどんなところですか?
業務アプリケーションとしてコアになるERPを使っていると各企業の社長さんやCEO(最高経営責任者)、 CFO(最高財務責任者)といった会社の上層の方とお話しする機会を持つことができます。企業のIT部門だけの方とやり取りするのではなく、多くの部門の方たちと話す機会が多いので勉強になりますし、今後の企業の課題を把握する絶好の場でもあります。すごくやりがいを感じています。
様々な業務に携わっている方々、経営層レベルの方とお話する機会ってなかなか持てませんので。また競争力を底上げするために自分が貢献できている実感も持てます。
就職にあたり何か準備はされましたか?
引退後すぐに東京に拠点を移しました。生活を落ち着かせたうえで仕事を探そうかなって。その後、知人の紹介でSAPジャパンの方を紹介いただき、応募の意思を伝え、5回ほど面談を通して採用となりました。
初めての業界なので事前に本を読んで最低限の知識は勉強しました。ですが、表面的な知識は付け焼き刃とわかっていたので、いかにサッカーで積み上げてきたものをビジネスの世界へ転換して活かせるかをアピールしました。

サッカーキャリアやサッカー感について
サッカーキャリアを教えていただけますか?
小学生の時にサッカーを始めて高校まで地元のチームでプレーしていました。その後、サッカーの強豪と言われる大学に進学することも考えたました。でもサッカー選手になれる保証もないので進学後の選択肢を沢山持てると考えて東京大学に進学しました。
大学入学時に心に決めた「初の東大からJリーガー」を目指してやれることは全てやりました。学業はもちろんトレーニングも全力で行い自分でプレー集なども作りJクラブへ売り込みも行いました。その努力が実り、ファジアーノ岡山に入団することができました。松本山雅FC、ザスパクサツ群馬でプレーし9年間のプロ生活を終えました。
まだサッカーをやれると思いませんでしたか?
9年目になり、サッカー選手として成長曲線を描けるイメージがありませんでした。J1を目標にやってきた中でその気持ちが大きくなり引退を決意した感じです。「もう少しやれたんじゃない?」って言ってくれる方もいましたが、高い目標を持ちながら激しい競争をする中で、現状維持で満足できる選手はいませんから。
プロに入った後にポジションを変えられたんですね?
はい。ファジアーノ岡山在籍時のプロ4年目(2014年)にDFへ転向しました。FWで入団したのですが、スタメンで出る機会がなかなか掴めずコンスタントに出場時間や結果を残せていませんでした。どうしたらいいだろうって考えた時に、DFであれば一度ポジションを確立できればずっと出続けられるのではって考えました。DFにケガ人が多かったというチーム事情もありましたが、うまくいかなくてもプレーの幅が広がるかなとも思っていたので。
なんとかスムーズにDFのプレーも出来るようになり監督から評価いただき、そこからはDF一本でやってきました。

どういうところがDFに向いていたと思いますか?
FWは自分から能動的に仕掛けて、相手を上回ってゴールを決める必要があります。それって相手を上回る圧倒的なパワーやスピード、技術など何かに秀でていないとやっていけないと思うんですよね。自分にはそれがないなと感じていました。ですが、DFは受動的に相手の仕掛けに対し対応するポジションなのでFWよりはシステマティックにできるところがあります。そっちの方が自分には向いてるかなって。
ただ、セオリー通り動き続けるのって難しいんですよね。思った通りに相手が動くわけではないものの、原理原則があるので、それを常に守り続けれられるかが最も重要です。
DFは面白いし、努力によって上のレベルに行けるポジションだとも思っています。
ビジネスに共通する部分ってありましたか?
はい。先ほどもお話しましたが、DFになったときに特に「当たり前の動き(原理原則)」を徹底しました。良いDFの選手ってまったく足が止まらないんですよね。好きな選手の一人にイタリアのキエッリーニって選手がいるんですが、あの選手はDFなのに常に動いているんですよね。
相手にボールがある時に自分のマークとか、自分の守備範囲にいる選手の動きやボールホルダーのボールの持ち方を見て重心移動をしてたり。横パスしたらすぐ状態を起こしたり。そういった当たり前と思われることをやれるように自分も常に頭と身体を動かしました。当たり前のレベルを上げることはビジネスでも活かせると思います。
ビジネスの世界での当たり前って何?って言われると難しいんですが、それは自分の中で築き上げるものだと思います。「これ」って一概には言えませんが、自分の中でこういう風にやればうまくいくっていうものを磨き続けることだと思います。
あとは、ビジネスマンって自分のプレゼンテーションを見返したり、ビデオを撮ったりしないですよね。サッカー選手だったら当然のように自分のプレーを見返して改善・修正していくと思います。サッカーで磨いてきたそういった習慣や修正する能力なんかはサッカー選手が持つビジネスでも役立つ武器かなと思っています。
何かやっておけばよかったことってありますか?
特にありません。何かおすすめはありますかって聞かれたら英語や簿記ですかね。一般教養を身につけておけば役立つ可能性がありますから。
よりよいセカンドキャリア準備のために
サッカー界へ戻る選択肢はありますか?
もちろん選択肢としてはありますよ。選手としてサッカーの現場でやってきた経験と、経営するビジネスの知識ってサッカーチームを運営するうえで両方必要だと思います。ですが、それらを繋げる人が少ないって聞いています。自分がそういった人材に適合すれば関わってみたいなって。
サッカーで身につけたことはありますか?
いくつかありますが、ひとつはチームワークですね。人を動かす力とも言えるかもしれません。自分とチームメイトの力を最大限発揮できる関係性を築くことで勝利に近づけると考えています。また、集団スポーツなので勝てないと他人の責任にしがちです。監督とか周りのチームメイトに目を向けちゃうとなかなか自分の成長がないし、結果も出ない。そんな中、自分自身にオーナーシップを持ち続けることは研ぎ澄ましてきたと思います。
その経験は仕事でも活用できそうですね?
はい。ITも専門知識が必要ですから。知識がある方にいかに気持ちよく仕事をしてもらって、自分の良さを出す関係性を築けるかを意識しています。まずは同僚と方向性を一致させることが大事だと考えています。
将来のキャリアパスはありますか?
明確なものはまだありません。このままIT業界にいて企業のデジタルトランスフォーメーションの支援をするのもいいし、事業会社側へ移ってその会社の一員としてデジタルの底上げをすることにも関心があります。
ただ、今は楽しく働けてますし、すごくいい会社なのでSAPジャパンで働き続けたいと思っています。
現在サッカーを頑張っている方々へアドバイスをお願いします
まず大前提としてサッカーを本気でやっていて、高いところに目標があるならですが。とことん上を目指し続けるために24時間どういうことをすべきか考えることが重要だと思います。
それらの負担にならない程度で引退後に備え、将来に役立ちそうな勉強をやればいいじゃないでしょうか。ただ「役立ちそうな」じゃ続かないと思うので、自分の好奇心に従って学ぶのがいいと思います。自分の場合、英語は海外旅行で行った先の人と話せるようになったら楽しいなって考えて勉強していましたし、簿記なんかはもともと数字が好きだったので、どういった仕組みで企業が成り立っているかなど好奇心があったので勉強も嫌ではありませんでした。ただ、なんとなくいつ来るか分からないセカンドキャリアのために興味がないことに継続して取り組むのって難しいと思います。
ですから現役中はサッカー以外で好奇心をそそる何かがあればそれに取り組んでみればいいと思います。
まずは自身が望むサッカーの目標のためにとことん突き詰めるべきだと考えています。人生1度きりだし今を精一杯やるべきです。
余談ですが・・・
今では色々とサッカー以外の世界でも活躍しているイメージのある本田選手や長友選手なんかもサッカー選手として上昇曲線を描いているときはサッカーに打ち込んでいたのかなって。
自分は現役中、サッカーでの目標を達成するために最大限の努力を注いできました。思った通りになりませんでしたが全く後悔はありません。今の仕事でその経験は活きてますから。なので皆さんもやれるうちはまずサッカーに全力を注ぐことが1番だと思います。


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久木田 紳吾(くきた しんご)1988年生まれ
出身地:熊本県、ポジション:DF・FW
サッカー歴:熊本県立熊本高校⇒東京大学⇒ファジアーノ岡山⇒松本山雅FC(期限付き移籍)⇒ザスパクサツ群馬
現職:SAPジャパン株式会社