現在の状況について
サッカー選手支援のお仕事をされているんですね?
スポーツキャリア・プロデューサーという肩書で活動をしています。サッカー選手のみなさんが現役時から能力を発揮して、選手としてはもちろんですが引退後も選手としての経験から活かせる要素をみつけて活躍してほしいという思いから様々な支援を行っています。
サッカーでの成果に比べ、サッカー以外のことには上手く取り組めていない方が多くいて非常にもったいないと思っていました。ちょっとした意識の転換などで活躍はできますからその後押しをするイメージです。
ー 様々な支援をされるんですね?
はい。これをやりますっていう限定的なものはなく、現役サッカー選手や元サッカー選手たちが考えていることを実現するための支援を行います。思考の整理や企画推進など、仕事に繋がらなくてもいいのでまずは相談頂ければ、私の支援が必要か検討し、必要であればご支援させていただくといった流れです。場合によってはご自身のみで行っていただくことも提案しますよ。
ー 具体的にはどういった例がありますか?
ちょうど今、元Jリーガーの杉山新さんの支援をさせていただいています。初めてお会いしたのは引退して3年目でした。16年間プロサッカー選手として活躍されましたが、12年間は病気(1型糖尿病)と共に戦ってこられました。あるシーズンの半ばころから体調がよくならず、病院へ行ったら発覚したようです。
その彼が引退後に自身の名義でサッカースクールを運営されていました。ある程度はスクール生が集まるものの、思い描いたような集客ができていなかったところ相談をもらい支援を始めました。
ー スペインにも行かれたんですね?
はい。杉山さんの中で自身の経験を活かして病気の啓発と同じ病気を患う子供たちの夢の後押しをしたいという思いがありました。色々と調べていくと、レアル・マドリードのナチョ選手も同様の病気をもちながら世界のトップクラスで活躍されていることがわかりました。そこから議論を重ね、杉山さんが考えていることを形にして企画を決め、推進のお手伝いを行いました。
最終的には「ナチョ選手の雄姿を子供たちに実際に見せてあげることで勇気を持ってもらいたい」となりプロジェクトを発足しました。クラウドファンディングを企画し子供たちとスペインへ行ってきました。とても子供たちは喜んでいましたし、夢を持てたと思います。さらに話題にもなりましたので啓発にもつながったかなって。
杉山さんがどういったことを成し遂げていきたいかをヒアリングし、自身の思いを引き出し、実行の支援を行うといったことも仕事の一部となります。


アスリートの支援を始めたきっかけは何ですか?
私自身、幼少のころから体操競技をやっていました。高校の頃には世界選手権国内選考会に出場できるレベルまで達することができましたが、ケガの影響で17歳で引退を決意しました。
自分の意思で引退を決めたものの「ケガをしなければ今頃どうなってたかな」って。20代後半くらいまで悶々としていました。10年間もですよ。17歳で引退した自分がそんな気持ちだったので、もっと長く現役をされた選手の心への負担は相当なものだと思ったんですよね。自分と同じような思いをする選手を少しでも減らしたいという考えから始めました。
ー その中でも主にサッカー選手を対象としている理由は?
サッカー選手のお話を伺っていると多くの選手から「サッカーしかやってこなかったから」のフレーズが出てきました。サッカーだけに集中してきたことの中にいろんなエッセンスがあることに気付けてないんですよね。日本を代表するプロスポーツであるサッカーは、競技人口も多く、より多くの選手に協力ができるのではと考えました。あとは競技ごとに環境や悩みなども違いますから多くの競技を対象にする前にサッカーに絞って、一つずつ経験を積み上げていければという考えからです。

優れたサッカー選手になるためには多くの要素が必要となります。自身の努力はもちろん重要ですが、「どのように課題を克服してきたか?」「競争に勝ってきたか?」「チームとして結果を出してきたか?」。それらを一つひとつ整理し、自身のこれからの人生に活かせる経験や能力にはどういうものがあるか?を明確化するお手伝いをすることで前向きに人生を歩んでいってもらいたいです。
どのように現在のお仕事を始められたのですか?
前職はカメラマンだったんですが、現在の仕事も少しずつ始めていました。最初のきっかけはサッカーイベントの撮影を行った際にゲストで参加されていたJリーガーの方にこういうこともやりますと話したところ、興味を持っていただき支援を始めました。
ー どういった方をご支援されるんですか?
まずは先入観なく必要とされれば支援したいと考えています。お話しをして、潜在的な”やりたいこと”がありそうだなと思えば抽象的なものから具体化するお手伝いをします。
ー 引退後のことを考えている現役選手って沢山いらっしゃいますか?
少しずつ状況は変わってきていると思いますが、まだまだそういった選手は少ないと思います。選手としてレベルアップするためにサッカーだけに集中することは当然です。ただキャリア終盤を目前に引退後に何をしたらいいかわからなくて漠然と不安を感じている選手が多いのも事実です。自身でその気持ちを発信するのは難しいので、私の方で何かのサインを事前に感じ取れればもっと深い支援ができるかなって常に考えています。

余談ですが・・・
ここまでの傾向だと、ポジション的にはMFやDFといった後ろの方の選手から相談をいただくことが多いですね笑。偶然かもしれませんが、ポジションの特性から全体をみてバランスをとるという傾向があって、自分の時間のバランスを取りながら先のことを考える行動をしている気がします。
また、引退を意識した際に誰に相談するかは重要だと考えています。私のスタイルとしてはがつがつ営業はかけずに友人のように会話をして、いつか引退後の悩みに直面した際に相談相手の一人になっていたらいいなと思っています。まずは接点がもてたらなと考えています。
ー アスリートの方たちにはどういった傾向がありますか?
自身のスタイルでここまでやってきて、成功してきていることもあり、サッカーについてはしっかり考えていますが、他のことに照らして判断基準を柔軟に変更したり、発想の転換をすることは苦手な選手もいます。そういったもったいないを少しでも減らしたいんですよね。例えば、SNSを投稿するにも違いがでますね。上手な選手だと自分の気持ちを上手く表現しながらも押し付けないといった印象です。ここ1年くらい支援させていただいているジェフユナイテッド市原・千葉の鈴木大輔選手なんかはデジタルを活用し上手く表現されていますね。現役時からファン・サポーターからの支持をもらえれば引退後も応援してくれたり、勇気が持てると思います。


ー 多くの方へノウハウを提供する準備もされているとか?
はい。これまでの支援を通して培ってきた内容をひとつにまとめたプログラムも準備しています。現役時にサッカーに集中したいからこそ、先の準備をしておきたい方にも最適です。ちょうど先日JFLの選手がプログラムに参加しましたが、引退後の準備をしておきたい気持ちもありながら、現役のうちは最後までサッカーを突き詰めたい。そんな中このプログラムを経験しておくことで「こういう風に考えておけばいいのかと気付きが多い。気付いたことはすぐにサッカーにも活かせる。引退後の心配が軽減され、さらにサッカーへ集中できるようになった。」との声をもらっています。
よりよいセカンドキャリア準備のために
現在サッカーを頑張っている方々へアドバイスをお願いします
現役サッカー選手だからこそやれること、社会への影響力があります。現在学生の選手でも、トップカテゴリー選手でなくてもひとつの事柄を継続して行うということはすごいことですから。引退後の心配はまだいいやと考えず、現役時代からサッカー以外のことに触れることはサッカーへのヒントになります。情報を得ておくだけでも心配が軽減され、目の前のサッカーに集中できたりと好影響もあります。まずは様々なことにアンテナを張って、発想の転換を心がけるだけでも未来は変わってきますよ。

善福 真凪(ぜんぷく まなぎ)
現職:スポーツキャリア・プロデューサー
サッカーしかやってこなかったを価値に変え、サッカーとやりたいことの成果を上げるための支援をしている。選手それぞれの魅力、つよみ、やりたいことを組み合わせて実現させるのが得意。